2010年

音源研究会は2010年10月に始まりました。参加者それぞれが曲をかけて報告するというものです。10月に初の会合を持ちました。

キャッチコピー。
音源研究会に必要なもの。一枚のCD、お茶、知性。以上。

参加者のかけた曲と報告テーマは次のとおりです。参加者7名。

粟谷佳司 研究会の趣旨説明、ロンドン・ノッティングヒル暴動とクラッシュの映像、ヴェルヴェット・アンダーグランドのシューゲーザーによるカヴァーから、telescopes,Candy Says。

川本賢 The Avalanchesからフリッパーズ・ギターなどに見られるサンプリングする音楽について。

河原弘樹 サディスティック・ミカ・バンドと日本のロック史の転換点。

和田進也 ボアダムズとノイズミュージック。アメリカのオルタナとの相関関係。

井上大地 マイ・ブラディ・ヴァレンタインとシューゲーザーについて。

長谷川佳澄 ネオアコ、アノラックについて。


メンバー写真。


資料 音源研究会のコント
その1
問い「音源研究会に望むことは?」
A「特になし」
B「楽しいです」
C「こんなのロックじゃない...」


その2
DJ「音源研究会どうだった?」
A「最高〜」
B「楽しかったデス」
C「ロックじゃなかった...」


その3
レポーター「音源研究会どう思います?」
PTA「由々しき事態です」
大人「まあいいんじゃない」
青年「やっぱりロックが必要じゃね?」

今年の音源(井上大地)

今年の音源10
できるだけ2010年に発売したものを中心に、今年1年よく聴いたCDアルバムを紹介します。


アジアンカンフージェネレーション「マジックディスク」(2010年)
「迷子犬と雨のビート」など、トランペットやストリングスの音色が印象深いですね。音楽の幅の広いアジカンが聴けます。アルバム通して若者の焦りや不安が歌われてて、共感できます。「キミ」と「ボク」の関係性が強調された、セカイ系歌詞も顕在。「迷い犬」がOPに使われているアニメ、『四畳半神話体系』にはまりました笑


七尾旅人「ビリオン・ヴォイシズ」(2010年)
独特の風貌と世界観を持ち、ジャズやテクノ、民族音楽など様々なジャンルを取り入れた音楽は非常に興味深いです。
同志社大学のEVE祭で、声で飛行機の音を再現するなど、情景が浮かぶようなコーラスパフォーマンスは、音楽の表現の可能性を強く感じました。


○MagicKids「Memphis」(2010年)
ビーチボーイズを意識した甘いメロディと、「夏」っぽさ。誰もが、感慨深い「夏」の思い出を持っているとは思いますが、そんな「夏」を思い出すかのような気持になりますね。非常にドリーミーで心地よいです。


くるり「言葉にならない、英顔をみせてくれよ」(2010年)
「温泉」「洗濯」がテーマだったり、生活臭のするシンプルなアルバム。「目玉のおやじ」は傑作。くるりはこれから、「東京レレレのレ」に見られるような民謡を取り入れた方向性を発展させていくのでしょうか?


Linkin Park 「A Thousand Suns」(2010年)
従来のリンキンの持ち味であったシャウト、ヘヴィーロックは完全に形を潜め、よりリズム感を意識したR&Bやヒップホップの要素を強く取り入れています。アルバムの半分はSEなどインスト曲。賛否両論ながら、これは間違いなく正当な進化を遂げたリンキン。特徴的な美メロと様々なジャンルをクロスオーヴァーさせた奥深い音で、アルバムを通して世界観を楽しむことができる良作です。


Underworld「Barking」(2010年)
今作はドラムンベースを取り入れた「Scribble」のように、新たなUnderworldの方向性がかいま見えます。それは太いベース音でクラブをグイグイ引っ張っていった力強さとゆうより、踊り疲れた後のチルアウト感ではないでしょうか。ジャケットやPVなど、アルバム全体のアート性が非常に高いのも好みです。


Two Door Cinema Club「Tourlist Hidstory」(2010年)
仏レーベル「Kitsine」からのギターポップバンド。いわゆるニューレイヴ系。メロディセンスとノリの良さは、最近の若手バンドの中でも頭一つ飛び抜けてると思います。テンション上げたいときは、常にこれでした。


BoredomsVision Creation Newsun」(2001年)
初めて聴いたときの衝撃と言ったら。五感で感じる音楽です。Boredomsマイブラのノイズは、お酒との相性が非常に良いです。


サニーデイサービス 「サニーデイサービス」(1997年)
今年最もよく聴いたアルバム。音楽とか小説の良さは、自分とは違う時代、違う場所に生きる人のものの感じ方、考え方を感じることができる点にあると思います。このアルバムも90年代の若者の素直な気持ちや、情景が歌われていて、胸にすっと入り込んできます。


My Bloody ValentineLoveless」(1991年) 
シューゲイザーの金字塔作品。今年はシューゲイザーにはまりましたね。巷にはたくさんのシューゲイズなアルバムが溢れてますが、やはり「Loveless」を越える作品はないのでは。甘美なメロディと、バックで漂うように演奏される轟音がマッチしてます。


次点 
Kimonos「Kimonos」(2010年)
ミスターチルドレン「Sence」(2010年)
DeerHunter「Microcastle」(2008年)

傑作選(ギャグシンセサイザー)

すれ違う二人。ダフトパンク篇。
A「ダフトパンク聴いた?」
B「何それ」
A「いやトロンでさ。」
B「トロントといったらナイアガラの滝でしょ。ナイアガラといったら大瀧、佐野、杉」
A「え、大滝秀治杉良太郎
すれ違いすぎ...


文学部タダ野教授。ジェイムソン
教授「ジェイムソンといえばポストモダンです」
学生「zz」
教授「彼はトーキングヘッズなどを挙げてパロディとパスティーシュを区別しました。パスティーシュの例としてキュアをカバーしたダイナソーJRが挙げられるかも」
学生「そのまんま」
教授「そゆこと」


白熱した教室
教授「ロックとは何か。この問いに答えを与えた者はいない」
観衆「拍手」
教授「しかし近づくことは出来る。ボスはロックだ。では聖飢魔IIは?」
聴衆「ヘビメタ」
教授「悪魔だ」


踊る音源御殿
芸人「このあいだセックス・ピストルズの本を本屋で注文したら、店員さんに入荷したらお電話では書名をお伝えしてもいいですか、って言われて...エロ本と勘違いされたみたいっすΣ(・□・;)」
師匠「テーマ変えます( *`ω´) 」


帰ってきた音源問答
三蔵「東京シティは?」
悟空「パラレル」
三蔵「違う。それは相対性理論。正しくは東京都心は。Tokyo Cityは風だらけ。わかるか」
悟空「?」
三蔵「ARB
悟空「AKB?」
三蔵「似ても似つかぬ代物ぢゃ」
悟空「修行が足りない」
三蔵「ARB石橋凌龍馬伝でも出ておる」
悟空「中村達也SIONもね!」

相対性理論『ミス・パラレルワールド


音源トーーク。
一同「ぼくたち音源研究芸人デス!」
司会「じゃ今日のテーマは?」
A「あ、パーフリとスチャダラの相関図から渋谷系を・・・」
司会「え、スチャラカ社員?」
B「いや、オリラブが・・・」
司会「え、オリラジ?」
C「いや宇田川町で・・・」
司会「え、うだるような暑さ?」
そんなわけねー

今年の音源(河原弘樹)

電気グルーヴ「VITAMIN」(1993)「DRAGON」(1994)
BOB MARLEY「EXODUS」(1977)

就職活動時にお世話になった3枚です。ES書いてる時、No Woman No Cryの「Everything gonna be alright」にどれだけ励まされたか。
電気はいわゆる現実逃避のためwwで、この2枚は言わずも知れた名盤ですが、電気のアルバムの中でおふざけ路線から本格的なテクノへ変化し始めた頃の作品で、石野卓球のロマンティシズムが炸裂してます。


BO GUMBOS「BO&GUMBO」(1989)

70年代には日本語でロックを歌うということに絶えず論争が起きていましたが、僕自身洋楽を嗜好する傾向があって、日本語ロックでも歌詞で多くを語る曲は嫌いでした。
しかしこれは日本語がすんなり耳に馴染んできて、このアルバムきっかけで邦楽を多く聞いたのも今年の傾向かもしれないです。
どんとはラブフリ出身て聞いたけど本当?


YMO「浮気なぼくら」「SERVICE」(1983)

YMOの中で一番聞いたのが後期のこの2作品でした。BGMやTECNODELICといった実験的なアルバムよりもポップで耳に馴染むし、何よりも明るいし。


サディスティック・ミカ・バンド「黒船」(1974)

ブログでレビュー書いた通りです。


放課後ティータイム(2010)

これはかなり聞きました。ポストモダン的。誰も傷つけない。特に唯のキャラソンが一番好きかもしれないですね。


やくしまるえつこ「ヴィーナスとジーザス」(2010)
相対性理論シンクロニシティーン」(2010)

荒川UBと四畳半神話体系の影響でよく聞いた2枚。個人的に明石さんの声は坂本真綾よりもやくしまるえつこが似合うと思う。


♪ Vampire Weekend「Contra」(2010)

Talking Headsと同じようにアフロ、カリビアンビートを取り入れさらにはストリングスやエレクトロの要素も融合させたポップな作品です。カリフォルニアの陽気なビーチのイメージが合います。色んな意味で10年代の幕開けがこのアルバムで良かったと思います。


Gorillaz「Plastic Beach」(2010)

スヌープドッグやルー・リード、デラソウル、ショーン・ライダーらそうそうたるメンバーが参加したアルバム。blur用にデーモンが作った曲も含まれているらしく、前作、前々作とくらべても多彩な仕上がりになってると感じました。


Brian Eno「Ambient1 Music For Airports」(1978)

寝るときはコレ。つい最近、空港で窓ガラスから差し込む朝日を浴びながら朝食をとった時にふと見た景色とシンクロしました。


The Brixton Academy?「Vivid」(2010)

唯一ライブに毎回足を運ぶ日本のバンドで、ヒューマンリーグ?やデュランデュラン?が引き合いにだされるようなロマンティックな1枚です。


トクマルシューゴ「Port Entropy」(2010)

おもちゃ箱をひっくり返したような音楽という印象です。京都の旧立誠小学校の講堂で見たライブは、その場所だけ異次元にワープしてしまったかのような浮遊感につつまれて、とても気持ちよかったです。


♪ KIMONOS「KIMONOS」(2010)

ナンバガやZAZENにはない向井秀徳の側面が現れたアルバム。西洋文化東洋文化が融合した大正モダニズム的な感じです。特にThe Girl In The Kimono Dressは最高。


BOOWY「MORAL」(1982)

ここ最近のブームです。ビートパンク。


☆番外編

♪ MOTHER original soundtrack(2004)

クロノトリガー original soundtrack(1995)

今年の音源(川本 賢)


 新譜よりも旧作を多く聴き漁っていた2010年。YMO周辺の音源を中心に発見が多い1年でした。


 Yellow Magic Orchestra『BGM』(1981)
 今年最大の再発見。インスタントに消費されない快感と、それに反しない絶妙な温度。未来は過去にあると感じた1枚。


 坂本龍一『音楽図鑑』(1984
 ここ最近聴いたアルバム。2曲目の“Etude”のメロディと展開には本当に舌を巻いた。彼独特のメロディは、正に胸キュン。



 細野晴臣『Tropical Dandy』(1975)
 就職活動中になぜかよく聴いた1枚。YMOの以前の、彼のエキゾティックな趣味がよく表れたサウンド。気分は香港かバンコク



Special Others『The Guide』(2010)
 彼ら4人の姿から溢れてくる何とも言えないピースフルな雰囲気に何度も泣かされた。今年のフジ・ロックでのライブは雨と涙でぐちょぐちょ。



 ♪Kimonos『Kimonos』(2010)
 『Zazen Boys?』にあったクールなエレクトロの方向性を推し進めたただひたすらクールな1枚。冷凍都市の夜のためのサウンドトラック。


 ♪Vampire Weekend『Contra』(2010)
 今年初めてアメリカで1位になったアルバム。彼らの音楽が「ポップ」として認知される世の中なら、まだまだ希望が持てるとも思う。This is POP!!


♪やけのはら『This Night Is Still Young』(2010)
 ついに自分の気分にぴったりとフィットするヒップホップのアルバムに出会うことができた、というように感じたほどよく聴いた1枚。ここには、ユーモアと思い出、そして終わらない音楽への愛情がある。2010年の夏の思い出と共に。

音源日記(粟谷佳司)

『DUB論』購入。ジュンク堂、京都BAL店。
 読みながら、Brian Eno,Another Green Worldを聴く。Enoもダブに強い関心を寄せていたし、それは音楽において実践されていた。
 レゲエ、ダブはパンク、ポストパンクにおいてさまざに影響を与えているが、それがなぜパンクだったのかというのは、クラッシュが大いに関係している。
 イギリスにおけるジャマイカからの移民の音楽であるレゲエ、ダブにクラッシュはノッティングヒルで出会っている。DJのドン・レッツもロキシーというクラブでレゲエをかけていた。その後、マイキー・ドレッドやジャマイカのレゲエのアーティストも世界進出のために彼らに協力したという経緯がある。このようにパンクというか当時のポップ音楽がレゲエを吸収する準備は出来ていたのである。
 クラッシュはカナダ・トロントに住んでいるウィリー・ウィリアムズの「アルマゲドン・タイム」をカバーして、グローバルに移動するレゲエを存在づけたのだった。ジャマイカのレゲエ・アーティストがなぜアメリカではなくトロントなのか、ここにも当時の状況が関連している*1
 ダブをポストパンクの文脈で聴くこと。ここから考えていきたい。そして、音楽のジャンルをサウンドの様式として捉えること、これも必要だ。 
(粟谷)(本稿は粟谷の次の著書の一部になる予定です)

*1:トロントにおけるレゲエシーンとその諸問題については、粟谷「カナダのブラック・ディアスポラ」『叢書グローバル・ディアスポラ ブラック・ディアスポラ明石書店(近刊)で分析している。

今年の音源(粟谷佳司)

Perfume,ねえ。(2010)
やっぱりパフームははずせなかった。
INO hdehumi,kaleidoscope.(2010)
これも今年後半にいきなり。YMOのカバーが秀逸。
クラッシュ、サンディニスタ! PIL,Second edition.
自分のなかでまだ消化できていないけど、ポストパンクにおけるダブはこれから調べていきたい。クラッシュとPILは音楽的なバックグラウンドが異なるが、ダブをどのように自らの音に消化しようとしていったのかは興味深い。
ダブの実験については、アンディ・パートリッジ(XTC)も聴いてみたいところ。
Miles Davie,Kind of Blue.
菊地成孔NHKの番組の影響。エレクトリック・マイルスはわりと聴いていたけど、Kind of Blueのジャズにおける革新と、サウンドもいいと思う。
坂本龍一,NEO GEO
坂本龍一ワールドミュージック接触していくころのアルバム。このアルバムは、ビル・ラズウェルイギー・ポップなども参加していて、音も低音が利いていて現在でもかっこいい。
コーネリアス,Cue
YMOのカバー。音響空間のアコースティックサウンド。これが細野、高橋の曲であるというのはちょっと興味深い。小山田圭吾スケッチショウのライブにゲスト出演していたと思う。それから「スコラ」でYMO
Twilight Set,Desert Song.(2010)
Twitterで知り合ったバンド。ペダルスティールギターや曲、サウンド、ボイスなどいい音。
フォーククルセダーズ,フェアウェルコンサート
中川五郎,受験生のブルース
現在書いている論文が60年代から70年代の関西フォークで、特にフォーククルセダーズと中川五郎は曲がヒットしたが、その後の活動はかなり異なっていて興味深い。(粟谷)